Robot-assisted surgeryロボット支援下膵切除

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2022.03.02

肝胆膵外科

ロボット支援下膵切除

膵切除は、消化器外科領域のなかでも難易度の高い複雑な手術です。そのため、大きな傷を用いた開腹手術が一般的に広く行われていました。しかし、患者さんの身体的負担は大きく、社会復帰や補助療法の導入などに時間がかかりました。お腹にいくつかの穴を開けてカメラを用いて行う「腹腔鏡下手術」は、傷が小さく体への負担が少ない手術として徐々に適応拡大され、急速に広まりつつあります。

「膵頭十二指腸切除術」は、膵頭部領域疾患に広く行われている標準的手術ですが、切除範囲は大きく(膵頭部、十二指腸、胆管、胆嚢、周囲のリンパ節)、その後、小腸を用いた再建(膵-空腸、胆管-空腸、胃-空腸)を必要とするため、非常に負担の大きい術式となっています。動きに制限のある腹腔鏡手術では、一部の切除手技や再建が非常に難しく、大きな課題となっていました。

「ロボット支援下手術」とは、ロボットアームを用いて腹腔鏡操作を補助し、操作性と精度を発展させたものです。2020年4月にロボット支援下膵切除が保険適応となり、現在一部の厳選された施設で「ロボット支援下膵頭十二指腸切除」「ロボット支援下膵体尾部切除」が行われています。

ロボット支援下手術の特徴

体内に挿入されたトロッカーと鉗子・カメラを、4本のロボットアームに固定し、これを用いて腹腔鏡手技を行います。術者は「コンソール」と呼ばれる操作ボックスに座り、3Dモニターを見ながらこれらを操縦します(ロボットが自動で手術をするわけではありません)。助手は患者さんの横に立ち、直接的に手術の補助を行います。

長所

  1. 鉗子は人の手以上の関節可動域があり、動く距離は実際の手の動きよりも微細になります。そのため精密で自由な操作が可能となります。
  2. 人の手では避けられない軽微な手振れが補正されます。
  3. 腹腔鏡手術よりも可能な動きが多く、手術時間が短縮されます。
  4. 数か所の小さい穴で手術を行うので、体の負担が少なく術後の痛みも軽減されます。

短所

  1. ロボットアームを介した操作のため、術者に触覚が伝わりません。そのため術者はロボット操作に習熟しなければなりません。
  2. ロボットのセッティングに多少の時間がかかります(当科のロボットドッキング時間は平均3-5分程度です)。

当院のロボット支援下膵切除 「Reduced-port robotic surgery」

当院では、日本で唯一の「Reduced-portを用いたロボット支援下膵頭十二指腸切除」を施行しています。Reduced- port(リデュースポート)とは、従来のロボット手術でつくる傷の数をさらに減らして、患者さんの痛みや身体的負担を軽減させる手術方法で、全国的には胆嚢摘出などの比較的単純な腹腔鏡下手術で広く行われています。当科の二宮理貴医師は、海外でReduced-portのロボット支援下手術に数多く従事し、2021年8月に日本で初めてこの手術を導入しました。

通常の腹腔鏡・ロボット支援下膵切除では、5-6か所のポート創のほかに、切除した臓器を取り出すために、途中で5-8cmのキズを作ります。当院で行われているReduce-port surgeryを用いたロボット支援下膵頭十二指腸切除では、5cmの小切開開腹創を初めから作成し、その創部から複数の鉗子やロボットアームを挿入することで、他のポート創を減らすことができます。これにより、患者さんのキズの「整容性の向上」や「創部痛の軽減」「身体的負担の軽減」を実現することができると考えています。

この技術は、世界でもまだ数人の外科医しか行うことのできない技術ですが、海外からのデータではその技術の安全性と有効性が証明されています。なお、この手術は日本で初めて導入される技術のため、当院では患者さんの同意が得られたものに限り、前向き臨床研究として登録をしています。これにより、今後この手術における本邦での安全性と有効性を証明していきます。



※ロボット支援下膵体尾部切除についても、同様にReduced-portにて行っております。

※2022年12月より、ロボット支援下肝切除を導入しました。

 

ロボット支援下肝胆膵手術に関するお問い合わせ
埼玉医科大学総合医療センター 肝胆膵外科・小児外科外来
049-228-3411 (代表)

ロボット支援下膵切除:肝胆膵外科 二宮理貴  外来日:金曜日 8:30~14:00

ロボット支援下肝切除:肝胆膵外科 牧 章   外来日:火曜日 8:30~11:00

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