Surgical treatment for children with severe motor and intellectual disabilities医療的ケア児の外科治療

  1. トップページ
  2. 技術
  3. 医療的ケア児の外科治療

2022.03.02

小児外科

医療的ケア児の外科治療

当院では、小児科の先生方を中心に「医療的ケア児」に対する医療の提供を行なっております。「医療的ケア児」とは、医学の進歩を背景としてNICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃瘻等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたちのことです1)。現在、全国の医療的ケア児(在宅)はおよそ2万人いると推計されています *1)。

当院は、世界有数のNICUを有しており、体重が500gに満たない新生児や、種々の染色体異常症を抱えたお子さん、先天的に重篤な疾患を抱えたお子さんの治療を行なっております。また、国内でも希少な小児救命救急センター(PICU)が稼働しており、外傷を含め重症なお子さんが入院される機会が増えております。

医学の進歩に伴い、このような重症なお子さんを救命できるようになってきましたが、一方で、医療的ケアが必要な状態で自宅へ退院されるお子さんもおられます。これらのお子さんの多くは、自宅でご両親による医療的ケアを受けながら生活をしております*2)。
医療的ケア児の手術においても、身体への負担を考え十分に適応を検討の上で、内視鏡手術を行なっております。また、当院に併設されている「医療型障がい児入所施設カルガモの家」とも連携し、往診や必要な外科的治療を行なっております。

小児外科では、医療的ケア児とその家族の生活の質を少しでも改善させ、より良い日々の暮らしを送れることを目指して、医療的ケア児に必要な外科治療の提供を行なっております。

医療型障がい児入所施設 カルガモの家にて

医療的ケア児の栄養

小児外科は胃瘻や腸瘻などの経管栄養や中心静脈栄養などの導入と管理を行なっております。お子さんが小さく身体の動きが少ない時期は、鼻から胃までチューブを挿入する胃管による栄養で本人やご家族のストレスも少なく日常生活を送ることができますが、身体が大きくなり活発になるにつれて胃管のチューブを抜いてしまうことが増えたり、また再挿入を嫌がったりすることで栄養の管理がストレスになることがあります。そのような場合には胃瘻にすることでストレスの軽減につながることがあります。

また、繰り返す嘔吐や逆流性食道炎のため生活の質が低下しているお子さんがいらっしゃいます。そのような場合には逆流防止手術を行うことで改善が期待できます。胃食道逆流症の診断や検査も小児外科が担当しております。胃瘻の交換や日常の管理に関しては専門の特定行為看護師と協力して行なっております。経管栄養や嘔吐症状など栄養のことでお困りの場合は小児外科へご相談ください。

胃瘻の基礎知識 カルガモの家 勉強会スライドより引用

噴門形成術(逆流防止手術)と胃瘻造設術

医療的ケア児に発症した救急疾患

医療的ケア児においても緊急手術が必要になるような救急疾患が起きる場合があります。また、人工呼吸器による気胸や縦隔気腫などの合併症、胃管や胃瘻・腸瘻などによる消化管穿孔や術後腸閉塞などが起きる場合があります。しかし、医療的ケア児では腹痛などの症状をことばで表すことが難しいお子さんが多く、また体力面での余裕がないため、急速に重篤な状態に陥ることがあります。そのような場合に小児科の先生方と協力し、速やかに対応できる体制づくりを行なっております。

医療的ケア児の小児外科common disease(日常疾患)

医療的ケア児においても鼠径ヘルニアや停留精巣などの日常疾患を認めることがあります。鼠径ヘルニアでは腸のはまり込み(嵌頓)*3)、停留精巣では将来的な悪性化(がん化)のリスクが知られております *4)。これらのリスクを考慮し適切な時期に外科的な治療を行なっております。もしかしてと気になっている症状がありましたら、小児外科へご相談ください。

参考文献
*1 厚生労働省 医療的ケア児等とその家族に対する支援施策
*2 厚生労働省 在宅医療ケアが必要な子どもに関する調査(H27年度)
*3 日本ヘルニア学会ガイドライン委員会 鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015
*4 日本小児泌尿器科学会 停留精巣診療ガイドライン

受診をご希望の方はこちら